「恋はみずいろ」を聴きながら

北海道釧路市で不動産鑑定士をしております小原孝太郎と申します。普段の生活を中心に書いてます。

「浮世の画家」を読み終えて。

カズオ・イシグロさんの「浮世の画家」を読み終えたところです。全体的に非常に緻密に構成された小説で、特に最後の100ページの内容が濃くて、寝落ちしてしまった箇所を何度か遡って読んで、ラストを迎えた…そんな感じです。

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(時間軸が行ったり来たりしますが、私はあまり気にならなかった。私も過去の思い出が増え、歳をとったということかもしれません)


特に印象的だったのは、孫との会話の中で自分の仕事観や世界観を語るシーン、師匠と対話するシーンや決別するシーンでした。芸術家でなくても誰もが共感できるそういう話だと思います。組織の価値観と個人の価値観との間に、開きができていく様が一対一の個人同士の会話によって紡ぎ出されていくのが、心に残りました。この作品もビジネス書として読めるのではないかな、そう思います。


この作品のラストは、様々な数奇な運命を辿った主人公なのだけれども、日本の将来を非常に前向きに、肯定的に考えている独白で終わります。私はこの小説を読んで、戦争が終わった後日本を離れ、フランス国籍を取得したレオナール・フジタこと藤田嗣治画伯のことを思い出してしまいました。どっちが正しいかということではなくて、大きな価値の転換がある中で、そこにとどまり、自ら命を絶つこともなく、日本社会や家族のこれからを見守っていく、この作品の主人公の強さを見習いたいものだ、そう思いました。イシグロさんはこの作品を32歳で書いたというのがスゴイですね。